伴走型支援で専門人材ゼロでもSBT認定取得。 CO2排出量の可視化を起点に企業価値向上へ
- 金属加工
- CO2削減への取り組み
- Scope 1,2の算定・可視化
- TCFD・SBT・CDPなどへの対応
- 非上場
CO2排出量の可視化を起点に企業価値向上へ

熊野製罐は、長年にわたり18リットル缶の製造を手掛ける専門メーカーです。欧州視察をきっかけに事業価値向上のため脱炭素化を決意したものの、SBT認定取得に向けた専門知識がないという課題に直面。その解決策として「MIeCO2」の導入を開始されました。伊藤忠丸紅鉄鋼が提供する「MIeCO2」を導入した結果、どのような成果があったのか、詳しくお話を伺いました。
- 商品で差別化や付加価値向上することが難しかった
- CO2排出量を客観的に測定・評価するノウハウがなかった
- 脱炭素の計画から実行までを担う専門人材が社内にいなかった
- 「MIeCO2」を通じて、国際的な指標であるSBT認定の取得をゴールに
- 煩雑な計算がいらず、データを入力するだけで簡単にCO2排出量がわかる
- 専門家による迅速な質疑応答と手厚い申請支援でプロジェクトが前進した
- 手厚いサポートにより、専門人材がいなくてもSBT認定という大きな成果を手にした
- SBT認定という客観的な強みを得て、商品の価値とPR戦略が明確に
- CO2排出量の可視化で、脱炭素が経営における新たな判断基準として加わった

熊野製罐株式会社 様
明治35年創業の金属容器専門メーカー。広島市の本社工場をはじめ国内4拠点で、18リットル缶や一般缶等を主に製造・販売。顧客への長年の安定供給を強みとしながら、近年はCO2排出量削減など環境負荷の低減にも取り組んでいます。
| 社名 | 熊野製罐株式会社 |
|---|---|
| 業種 | 金属容器の製造・販売 |
| 従業員数 | 84名 |
| 設立 | 明治35年(1902年) |
| URL | https://kumanoseikan.co.jp/ |
熊野製罐株式会社
欧州で見た「本気」の脱炭素経営。
帰国後、専門知識という高い壁に直面する
当初、私たちは昨今の脱炭素の潮流をどこか遠い国の話のように捉えていました。お客様から脱炭素に関するお問い合わせが来ることも限定的でしたし、身近な同業他社で積極的に取り組んでいるという話も耳にしませんでした。そのため、「中小企業の対応はまだ先の話だろう」と、正直なところ静観していたのです。
その一方で、私たちは長年続く事業の根本的な課題にも向き合っていました。主力製品である18リットル缶は、他容器との競合にさらされる一方、製品そのもので差別化が非常に難しい製品であり、どうすれば製品の価値を向上させ、事業の社会的な価値を高めることができるのかを常に模索していました。この時点では、「脱炭素」と「事業価値の向上」という二つのテーマは、私たちの頭の中ではまだ結びついていませんでした。
その両者が一本の線としてつながったのが、2024年の欧州視察です。現地で目の当たりにしたのは、製造業の企業が脱炭素を単なるコストではなく、明確な事業の強みとして大規模な投資を行い、本気で勝ち残ろうとしている姿でした。私たちがずっと探し続けていた製品の新たな価値、事業の社会的な役割を高めるための有効な手段が、この脱炭素への取り組みにあるのではないかと思ったのです。
この視察を終え、高い熱意を持って日本に帰国したわけですが、その熱意とは裏腹に、いざ自社で取り組もうとした途端、大きな壁に直面しました。具体的な進め方が皆目見当もつかない状況だったのです。社内に専門的な知見を持つ人材がいるわけでもありません。太陽光発電を導入すればCO2は減らせるかもしれませんが、自社の排出量をどう測定し、どうすれば第三者から客観的に評価される数値になるのか。計画的に進めるためのノウハウが完全に欠如していました。事業価値の向上という高い目標を掲げたものの、その第一歩を踏み出すための足がかりが見つけられない。それが、私たちのスタート地点でした。
熊野製罐で働く社員
CO2可視化ツールと伴走型の支援体制に安心感を抱き、導入を決断
具体的な進め方が分からず課題を感じていた中、日頃から鉄鋼の取引でお世話になっていた伊藤忠丸紅鉄鋼から、脱炭素トータルソリューションサービス「MIeCO2」をご紹介いただいたのが最初の出会いです。その過程で、現在の脱炭素を取り巻く環境や今後の動向、そして「SBT認定」という国際的な目標設定の仕組みなども知りました。これに取り組むことで、漠然としていた課題が明確になり、事業価値向上というゴールへの道筋が見えてくるのではないかと直感しました。
「MIeCO2」の導入を決めた理由は、大きく二つあります。一つは、ツールとしての機能性です。私たちのように社内に専門的なリソースがない企業にとって、データを入力するだけでCO2排出量を客観的な数値として把握できる点は、非常に大きな魅力でした。もし同じことをゼロから社内で行おうとすれば、それこそ莫大な手間と時間がかかったはずです。その点、「MIeCO2」のツールは入力業務が中心で、業務負担を大幅に増やすことなく導入できると感じました。
そして、それ以上に大きかったのが、もう一つの理由である伴走型の支援体制です。SBT認定の取得や今後の脱炭素への取り組み方について、的確なサポートをいただけることが決定打になりました。導入前に担当の方が何度も丁寧に説明してくださったおかげで、特に大きな不安もなく、「まずは着手してみよう」とすんなり決めることができました。専門知識がなくても、ツールと人のサポートが一体となってゴールまで導いてくれる。その安心感が、他社との比較を一切行わずに導入を即決できた最大の理由です。長年の取引で築いてきた信頼関係はもちろんですが、担当者の熱意や知識、お人柄もあって、すべてを信頼してお任せできると感じていました。
熊野製罐の製品
担当者との二人三脚でSBT認定取得へ。迅速な質疑応答で課題解決
「MIeCO2」を導入し、SBT認定取得のプロセスが始まってから、伊藤忠丸紅鉄鋼の手厚いサポート体制のありがたみを改めて実感することになりました。まず着手したデータ収集では、生産拠点が4カ所あるため、何が算定対象になるのかを把握するところから始まりました。工場のスポットエアコンなども対象になるのか、その中のフロンガスの量をどう特定するのかなど、これまで触れてこなかった部分に関して、可視化に必要なデータを漏れなく探していく作業は、最初の関門でした。しかし、何が対象になるかという判断に迷った際には、その都度担当の方に質問し、すぐに的確なアドバイスをいただけたので、悩む時間はほとんどありませんでした。
また、私たちは過去6年分ものデータを遡って算定しました。コロナ禍で生産量が大きく変動したことと、太陽光発電の導入も行っていたため、短い期間のデータだけでは正確な傾向を把握するのが難しかったからです。手間はかかりましたが、複数年のデータを「MIeCO2」で可視化・比較できたことで、最も達成しやすく、かつ説得力のある基準年を選ぶことができました。申請作業は英語で行う必要がありましたが、ここでも手厚いサポートがありました。オンラインでの説明会や、書き方のポイントが具体的に書かれた資料を準備していただき、私たちが作成した下書きを担当の方にチェックしてもらう、という形で進めていきました。
プロジェクトを進める上で、担当の方とは本当に細かくやり取りをさせていただきました。私たちの理解が足りず、似たような質問を何度もしてしまったのですが、その都度、的確で分かりやすい回答を迅速にいただけたので、非常に助かりました。時には1~2時間の間に立て続けに質問することもありましたが、いつも丁寧に対応していただき、安心して作業を進めることができました。まさに「二人三脚」で進められたという印象です。専門用語も多く、まさに手探りの状態でしたが、手厚いサポートがあったからこそ、ここまで来られたのだと実感しています。
SBT認定取得で脱炭素が経営の軸に。事業価値向上のPR基盤も構築
手厚いサポートのおかげで、申し込みから約6カ月で、当初ご提示いただいたスケジュール通りにSBT認定を取得することができました。大変感謝しています。この認証取得はゴールではなく、あくまで脱炭素への取り組みのスタートライン。これから削減計画を着実に実行していかなければならないと、気持ちを新たにしています。
導入後の最も大きな変化は、私自身の意識の変化かもしれません。さまざまな投資をする際に、「脱炭素」という視点を常に意識して考えるようになりました。経営資源の限られた中小企業にとって、脱炭素だけを目的とした大きな投資は難しいですが、長期的な計画の中で必要な設備投資を行う際には、脱炭素を前提として業務プロセスや使用エネルギーの最適化を検討するようになったのです。CO2排出量を正確に可視化できたことで、勘や手探りではなく、データに基づいた経営判断ができるようになりました。
社外的には、今回のSBT認定取得を、事業価値向上のための強力なPR基盤にしていきたいと考えています。脱炭素に取り組むことで従業員にも自社製品への誇りをこれまで以上に持ってもらいたいという期待もあります。今後はホームページなどを活用し、効果的なPRを展開していくつもりです。伊藤忠丸紅鉄鋼はPRのノウハウも豊富にお持ちなので、引き続きご相談させていただきたいですね。当面は削減計画の実行が第一ですが、将来的には製品単位でのCO2排出量の把握も視野に入れています。脱炭素の取り組みを始めたからこそ、こうした次のステップへもスムーズに踏み出せる。このアドバンテージを活かし、今後も企業価値の向上に努めていきます。
