「MIeCO2」導入で全国6拠点の電力コスト5%削減。 CO2排出量データの活用で円滑な資金調達も実現
- 金属加工
- CO2削減への取り組み
- Scope 1,2の算定・可視化
- Scope 3の算定・可視化
- 非上場
CO2排出量データの活用で円滑な資金調達も実現

大手ハウスメーカー向けにユニット式基礎鉄筋を提供するメークス。取引先からのCO2調査依頼をきっかけに、伊藤忠丸紅鉄鋼の脱炭素トータルソリューションサービス「MIeCO2」を導入しました。その結果、全国6拠点の電力コスト5%削減と、サステナビリティ・リンク・ローンによる円滑な資金調達という大きな成果を達成。知識・リソース不足という課題を乗り越え、多角的な経営改善を実現できた理由について、詳しくお話を伺いました。
- 大手取引先からのCO2調査依頼が急増、サプライチェーン対応が急務に
- 新事業「オフセット鉄筋」構想を実現するCO2算定ノウハウが皆無だった
- 全国6拠点の電力契約が拠点ごとに異なり、コスト管理業務が非効率だった
- 手厚い伴走支援が決め手となって、CO2排出量を自動算定できる「MIeCO2」を導入
- 全国6拠点の電力契約を「エネオク」で一括見直し、業務効率化とコスト削減を実現
- 可視化データを「サステナビリティ・リンク・ローン」に活用し、円滑な資金調達を実現
- CO2可視化で大手取引先から高い評価を獲得、サプライヤーとしての信頼性が向上
- 全国6拠点の電力コストを5%削減、煩雑な個別契約業務からも解放
- CO2排出量データが融資審査の「資産」に。円滑な資金調達と金利優遇を実現

メークス株式会社 様
茨城県守谷市に本社を置くユニット鉄筋メーカー。全国6つの製造拠点で主力製品「ユニット式基礎鉄筋」を生産しています。建設現場の工期短縮と省力化に寄与する製品力で、大手ハウスメーカーから厚い信頼を獲得。近年はサプライチェーンの一員として、脱炭素経営の推進にも取り組んでいます。
| 社名 | メークス株式会社 |
|---|---|
| 業種 | 建設用金属製品製造 |
| 従業員数 | 389名 |
| 設立 | 昭和60年6月 |
| URL | https://www.i-makes.com/ |
工場内の様子
大手からのCO2調査依頼と新事業構想がCO2排出量可視化のきっかけに
私たちメークスの主なお取引先は、大手ハウスメーカーです。主力製品の「ユニット式基礎鉄筋」は、工場で鉄筋を網目状に加工することで、現場での複雑な作業を大幅に減らせる製品です。工期短縮と品質の安定化に貢献し、お客様から厚い信頼をいただいています。
近年、その大切なお取引先が、本格的に脱炭素経営へとシフトし始めました。事業で使う電力を100%再生可能エネルギーで賄う「RE100」への加盟や、科学的な根拠に基づく削減目標「SBT」の認定取得など、その動きはとても活発です。さらに、2027年3月期からは、大手の上場企業に対して、自社だけでなく取引先も含めたサプライチェーン全体のCO2排出量(Scope1・2・3)を開示することが義務付けられることになりました。
これは、サプライヤーである私たちにも直接関わってくる大きな変化です。お取引先が社会的な責任を果たすためには、私たちの正確なCO2排出量データが欠かせなくなるからです。実際、最初は「年間の電気やガスの使用量を教えてください」といったシンプルな依頼でしたが、将来的にはサプライチェーン全体でCO2を把握し、一緒に減らしていくという、より大きな協力体制が求められるのは時間の問題でした。脱炭素は、もはや他人事ではなく、自分たちの事業の将来を左右する重要な経営テーマになったのです。
私たちは、この変化を受け身で捉えるのではなく、新しいチャンスと捉え直すことにしました。社長のリーダーシップのもと、製造時に出るCO2をクレジットで相殺し、実質ゼロとみなす新製品「オフセット鉄筋」のアイデアが生まれたのです。これなら、環境意識の高いお客様に新しい価値を提供でき、他社との差別化も図れると考えました。
お取引先からの要請に応える「守り」と、新製品で市場を切り拓く「攻め」。この両方を実現するための第一歩が、自社のCO2排出量を正確に知る「可視化」でした。
メークス様の「ユニット式基礎鉄筋」生産現場
知識ゼロ、兼任2名でも安心。手厚い伴走支援が導入の決め手
「CO2排出量を可視化する」という目標は決まったものの、いざ実行するとなると、現実的な壁がいくつかありました。まず、社内に脱炭素の専門家が一人もいなかったこと。自社の燃料や電気使用量(Scope1・2)の計算方法さえ手探りなのに、将来的には取引先全体の排出量(Scope3)まで見なければならない…。国際的なルールに沿って、これをゼロから自分たちでやるのは、正直かなりハードルが高いと感じていました。もう一つの悩みは、人手が足りないこと。専任の担当者は置けず、私ともう一人のたった2名で、本来の仕事と兼務しなければなりません。データ集めや計算に時間がかかりすぎて、本業に影響が出てしまうのでは、という不安がありました。
そんな状況でご紹介いただいたのが脱炭素トータルソリューションサービスの「MIeCO2」です。導入の決め手はいくつかありましたが、まず一つ目は、パートナーとしての信頼感です。長年のお付き合いで私たちの事業を深く理解してくださっている伊藤忠丸紅住商テクノスチールからのご紹介であり、伊藤忠丸紅鉄鋼がNTTドコモビジネスの可視化プラットフォーム等と連携して提供しているという背景は、大きな安心材料でした。
二つ目に、システムの使いやすさも魅力でした。専門家でなくても直感的に操作できる画面デザインで、これなら兼任の私たちでも無理なく続けていけそうだと感じました。
そして、導入を決定づけた最も大きな理由が、手厚い「伴走支援」でした。ただシステムを提供するだけでなく、データの集め方から入力、進捗の管理まで、専門家がまるでチームの一員のように二人三脚でサポートしてくれました。知識も時間も限られた私たちにとって、このサポート体制こそが「これなら、きっとやり遂げられる」と思わせてくれる、何より心強いポイントでした。
実際に導入してみると、そのサポートは期待以上でした。担当の方がわざわざ茨城県守谷市の本社まで来てくれて、直接操作方法を教えてくれましたし、日々のちょっとした疑問にもメールや電話ですぐに答えてくれました。この手厚いサポートがあったからこそ、私たちは本業への影響を最小限にしながら、CO2可視化という大切な一歩を、着実に踏み出すことができたのです。
品質管理の様子
電力コストを5%削減。さらにMIeCO2データを活用して資金調達を実現
手厚いサポートのおかげで、私たちは無事に自社のCO2排出量を「見える化」することができました。さっそく、そのデータを手に、もともとの目的だった新商品「オフセット鉄筋」について、大手ハウスメーカーとの具体的な対話をスタートさせました。
しかし、話を進める中で、今の市場のニーズとの間に少しギャップがあることも見えてきました。物流倉庫のような大きな建物ではそうした製品への関心が高まっているものの、私たちのメイン市場である戸建て住宅では、まだコストが重視される傾向が強く、本格的な普及にはもう少し時間が必要だということが分かったのです。この状況を踏まえ、「オフセット鉄筋」の事業化は、一旦保留することにしました。ですが、可視化への挑戦は、ここで終わりではありませんでした。出てきたデータをただ報告書に載せるだけでなく、他の経営課題を解決するための「資産」として活用する、新しい道を提案してくれたのです。
その一つが、「MIeCO2」と提携関係にあるエナーバンクが提供する電力リバースオークション「エネオク」の導入でした。これは、たくさんの電力会社がオンライン上で一番良い条件を競ってくれる仕組みです。私たちの会社は製造拠点が全国6カ所にあり、電力契約の管理が煩雑になっていたので、この提案はまさに渡りに船でした。実際に使ってみると、拠点ごとに交渉する手間がなくなり、業務がぐっと楽になりました。そして、2025年4月からの契約切り替えで、年間の電力コストを5%も削減できるという、うれしい成果につながったのです。
効果は金融面でも現れました。お付き合いのある地方銀行から「サステナビリティ・リンク・ローン」という、CO2削減目標の達成度に応じて金利が変わる融資を提案されたのです。その審査の際に「MIeCO2」で算出した信頼性の高いデータが大いに役立ち、おかげで融資はとてもスムーズに進みました。
当初のアイデアは一旦保留となりましたが、CO2可視化への挑戦は、結果的に「コスト削減」と「資金調達」という、二つの大きな経営課題を解決するきっかけをくれました。
大手取引先から高評価を獲得。脱炭素が新たな信頼の軸に
一連の取り組みは、数字で見えるメリットだけでなく、社内外の「関係性」という面でも、たくさんの良い変化をもたらしてくれました。
社外でうれしかったのが、主要なお取引先である大手ハウスメーカーからの評価です。「MIeCO2」を導入し、CO2の可視化から経営改善までつなげたことをお伝えしたところ、「メークスさんは、そこまで進んだ取り組みをされているんですね」と、お褒めの言葉をいただきました。私たちのような中小企業が、主体的に脱炭素に取り組む姿勢を見せることが、お取引先にとっての安心感につながり、パートナーとしての信頼を深める新しい「信頼の軸」になっていると感じています。
今後は、SBT認定のような国際的な認証の取得も視野に入れ、私たちの取り組みをより客観的な形で示していきたいと考えています。さらに、再生可能エネルギーの導入や、省エネ設備への更新といった挑戦も検討中です。
最後に、もし同じようなことで悩んでいる企業の方がいらっしゃれば、ぜひお伝えしたいことがあります。それは、「続けられるシステムの使いやすさ」と「いつでも相談できるサポート体制」がいかに大切か、ということです。直感的に使える仕組みと、親身な伴走支援があったからこそ、私たちは本業と両立しながら、着実に成果を出すことができました。脱炭素は、一つのプロジェクトではなく、経営そのものを強くする取り組みです。その実現を後押ししてくれる基盤として、「MIeCO2」は有効な選択肢だと、自信をもっておすすめできます。
